本当に食べてほしい人に、提供できないなんて
高校を卒業してから、パティシエの道に進んで15年以上経ちます。
ずっとスイーツを作ってきたけど、忙しすぎて自分の大切な人に作ってこれませんでした。
「こんなに腕を磨いても、本当に食べてもらいたい人に、提供できないなんて……何をやっているんだろう?」
その想いは年々ふくらんでいき、「このままじゃいけない、大切な人に食べてもらうんだ!」と起業を決意しました。
パティシエの仕事は好き。一生続けていきたい。そのためには、時代に合わせて自分の働き方を変えていく必要がある。自分がそれを実現することで、今まで一緒に働いてくれた後輩たちにも色んな生き方があることを示せると思いました。
パティシエはお菓子は人を幸せする素晴らしい職業だと信じています。でも、お菓子は必要以上に食べすぎると毒になることも、パティシエとして心得ておきたいのです。
「機能美」という言葉が好き
機能を果たすための、無駄を削ぎ落とした形だからこその美しさ。私がスイーツを作るときに一番意識してきたことです。
私はケーキ屋さん出身ではなく、主にレストランやブライダル専門のパティシエでした。レストラン時代はお客様ごとにシェフと相談してメニューを決めます。
レストランに来るお客様の目的は、美味しい料理を食べたいだけではありません。記念日のお祝い、感謝を伝えたい、接待で成約を決める、久しぶりの友人との会話を楽しみたい。
人の行動には目的があります。それを可能な限りくみ取ったメニューを考える事が、私にとって最も緊張する楽しみでした。
目的を達成するデザートを
また、ブライダル時代にご一緒出来た素晴らしいシェフたちのおかげで、料理への知見も広がりました。フランス料理の技法や、彼らの香りの使い方を学んだ経験が、「目的を達成するデザート」を作ることに磨きをかけてくれました。
季節の食材を使い、自分のパフォーマンスを最大限魅せるために技術を伸ばすことも重要ですが、「誰のどんな要望に応えるのか」ここに気づかないと自己満足の作品になってしまいます。
みんなに愛される万人受けするものより、本当に必要な人にだけ、尖ったものが届けばいい。それが私の想いです。