レモン×オヤツの可能性は無限大(∞)
人とレモンの古く長い関係
レモンも人類と同じように、長い歳月をかけて進化してきました。レモンの祖先にあたる果物は、中国南部、もしくはインダス文明周辺が起源とされます。そして中近東を経て、ヨーロッパへ渡りました。
古代ヨーロッパでは、レモンは観賞用の植物でした。ですが、中近東ではアラブ人による「医食同源」思想のもと、レモンを使った料理やシャーベットがあり、それらが地中海の国々へ伝わりました。
●10世紀半ば
東地中海海岸で栽培が始まり、11世紀半ばにはエジプトの市場でもレモンが売られていたと記録がある。
●11世紀~13世紀
十字軍によってレモンの果汁を飲む習慣や、調理法がヨーロッパ中に広がる。1493年、コロンブスの2度目の航海で、ついにレモンは大西洋を越えてアメリカに渡る。
●15世紀~17世紀(大航海時代)
長い航海の間にビタミンCが不足して患う壊血病が問題になる。その予防として、ビタミンCを多く含むレモンが重宝される。
●18世紀以降
イギリス海軍は、船にレモンの積載を義務づける。この時代、レモンは世界中に食物を広めた船乗りの健康を支える。レモンそのものの伝播だけでなく、人類の食生活の発展に貢献する。
日本で最初にレモンが伝わったのは、明治のはじめ1873年、静岡県の熱海でした。湯治に来ていた外国人が庭先にレモンの種を播いたのが始まりといわれ、ほどなくして静岡と気候的にも近い和歌山県に伝わっていきます。その後、食文化の洋化に伴いレモンの消費は増え続け、現在も瀬戸内海を中心に、広島、愛媛、熊本で栽培されています。
レモンの香り:新時代の特許にも関わるリモネン
柑橘の皮の香り成分である「リモネン」には、赤血球、白血球を活性化させ、血液をサラサラにするなど、たくさんの有用性があります。そして、アセチルコリンエステラーゼ抑制作用によって、記憶の伝達を促すため、アルツハイマー病に有用とのことで、認知症予防の改善の特許が提出されています。
フレッシュで、少し鋭い甘味と酸味を感じさせる香り。リモネンの香りには、鎮静作用・緩和作用によるリラックス効果があると言われ、レモンの精油にはストレスを感じたときや、不安を感じたときにそれらを軽減する働き、気分を高めてくれる働きも期待されています。
また、爽やかな香りはデスクワーク時のやる気の低下予防や、眠気覚まし、体内時計が乱れているときの「覚醒」に取り入れられることもあります。
リモネンは消化吸収促進や胃粘膜保護など、消化器系への働きかけにも優れています。そのため、リモネンを多く含むレモンの精油は、胃腸の働きが良くないと感じたときに活用されることがあります。
森林浴のようなリフレッシュ効果があるα-ピネン
もう一つの香りの特徴が「α-ピネン」です。疲れたなあと感じたとき、森林に入って木の香りに包まれる、いわゆる森林浴にリフレッシュ効果・癒し効果があるのは、植物が発散する化学物質(テルペン類)によるものが多いと考えられています。
このテルペン類の代表的なものとして、「α-ピネン」と「リモネン」が挙げられます。ピネンは松に由来する松脂の主成分で、α-ピネンは単体だと森林浴をイメージさせる香気とされています。レモンにはこのα-ピネンが3%含まれており、柑橘系の香りの中で唯一、頭脳明晰作用があり、心を落ち着かせ、新たな気持ちにさせてくれます。
レモンケーキの仕掛け
ミライオヤツでは、不定期で季節のオヤツの詰め合わせや、契約したBARやカフェにケーキを卸したりと、マドレーヌ以外の商品もお届けしています。
そのなかでも人気の「レモンケーキ」の秘密をご紹介したいと思います。食べ物を食べる際、味覚として伝達される速度は、約0.6秒と言われています。でも、食べ物には、必ず香りがついています。香りが脳へと伝わる速度は、0.05秒。香りの方が、伝達が早いのです。レモンの香りを最大限感じていただくために、3つの仕掛けをしています。人の脳は、嗅覚から得たレモンの香りの情報をレモンの味だと錯覚するのです。
香水の世界では香りのタイプを分類し、それぞれ「○○ノート」と呼びます。ノートという言葉は香りの種類だけではなく、時間経過による変化に対しても使われます。時間経過によるノートは、次の3段階に分けられます。
トップノート:付けてすぐに立つ香り
ミドルノート:配合されているすべての香料がバランスよく香る
ベースノート:数時間経って香りが消えるまでの残り香
これをレモンケーキを作るときにも表現しています。
「もう一口食べたい」を試行錯誤する
最初は、レモンのフレッシュな香り。細かく削ったレモンの皮ときび砂糖とを擦り合わせておくことで、鼻先香として口に近づた瞬間レモンだとわかり、食べると即、香りが開きます。次に発揮するのがレモンの香りを閉じ込めたオイルから感じる香り。喉を通り、鼻腔から出てくる口中香です。
オイルが口の中の体温で温まる事で、香りに余韻を持たせます。さらに残ったレモンはオイルで煮てコンフィチュールにして入れます。粒状にレモンの食感が加わることで、噛んだとき不規則に時間差でレモンを感じます。このときに酸味も感じる事で、唾液を促し自然に飲み噛むことができます。この仕掛けで「もう一口食べたい」と、思えるのです。
今までもデザートを作る場合、その一皿を最後までおいしく食べ切るためにいろんな仕掛けをしていました。レストランでは、温度差のあるものや食感の違いを使うことができましたが、今は完成したケーキとしてお届けする中でどう仕掛けを作るか、日々研究しながら楽しんでいます。